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なのはとしょ

リリカルなのはの二次小説-ssを掲載しています。

チヴィ

第1話:始まりと日常【リリカルなのは二次小説:フォローアフターエンド】

 桜の開花と共に、街を風も暖かくなってきた始まりの季節。
 桜の花が舞う海鳴市に、とある家族が引っ越してきた。
 家族構成は母親と高校生の息子、そして小学生の娘の3人家族。
 父親はもういないけれど、天真爛漫な母親と、自由奔放な長男、そして一家のマスコット的存在である末っ子の長女が集まれば、そこらの家庭よりも、よほど賑やかになる。
 さて、その一家の長男である響秋人は、自分達がこれから暮らしていく新しい家、そのリビングでもくもくと荷物整理をしていた。
 あらかたの家具は引越し業者が配置してくれたが、部屋を見渡すと、まだ整理されていないダンボール箱がいくつも並べられている。
 全部片付け終わるには数日掛かりそうだが、今はいったん置いておくとして、新しい土地、新しい家にやってきたことを確かめるように部屋を見渡す。
 誰もいない空間。
 おおきく息を吸い込んでみると、これまで人が住んでいなかった部屋の、独特な匂いがする。
 よその家に行くと、自分の家とは違う匂いがするのと似ていた。そういう意味では、この家はまだ自分に馴染んでいないのだなと思う反面、新鮮な気持ちにさせてくれる。
 秋人は日差しが差し込んでいる窓際に近づくと、そっと窓を開けた。
 暖かい風がふわりと流れこんできて、部屋の空気をかき混ぜる。
 「ま、すぐに馴染むさ」
 すぅーっと息を吸い込むと、風に乗って潮の香りがする。
 海鳴市に来た誰もが最初に受ける、この土地ならではの歓迎の挨拶だった。
 余韻を味わうようにしばらくその場で風に吹かれていたが、それを邪魔するように腹の虫が鳴いた。いくら感傷に浸ろうとも、腹が減るのは仕方ない。
 「そろそろ昼飯にしないか〜?」
 部屋の外に向けて秋人が声をかけると、
 今まで自分の部屋で荷物整理をしていた妹は、とてとてと台所に向かうと、自分より大きな冷蔵庫の扉をひっぱって開けると、乗り出すように顔をっこむ。
 しかし中には脱臭剤以外に何も入っていなかった。
 「なにもない……」
 信じられない。そんな顔で、すがるような視線を向ける。
 「そりゃあ、買い物してないんだからな」
 そしてもう一度冷蔵庫に顔をつっこんでから、秋人に向き直る。
 「れいぞうこがつめたくないぃ〜」
 「何も入ってないのに電源入れてても電気代がもったいないからな」
 詩乃は冷蔵庫を閉じると、黙って秋人の近くまで来てから、床に寝そべった。
 「ひとをその気にさせておいてこのざまですか……」
 「えぇ〜、俺はそこまで妹を落胆させてしまうことをしでかしてしまったのか……」
 「はいはいソコの迷える子羊たちよ、優しい母が救いの手を差し伸べてあげましょう」
 そこへ別の部屋を整理していた二人の母親、悠子が携帯電話を片手にやってきた。
 「お昼は出前とっといたわよ」
 「何を頼んだんだ?」
 「ヨコイチのカレー! もちろん詩乃ちゃんの分は甘口よー」
 「おかあさん、ぐっじょぶ!」
 絶望にひれ伏していた妹が、目を輝かせながら起き上がると、母親に向けて手を上げる。
 『いえぃっ』
 悠子と詩乃は手の平にパチンと手を合わせてキャッキャと笑った。
 「やれやれまったく、たかがカレーでそこまではしゃぐとは……」
 「秋人の分にはちゃんとチーズをトッピングしてあるからね」
 「いやっふぅぅ!」


 秋人たまらずのガッツポーズである。人間は小さな事でもこんなに喜び幸せになれるものなんだ、ああなんて素晴らしいのだろう。ぼかぁ人間に生まれてよかった!
 まるでそう言わんばかりの喜びようである。
 「おにいちゃんはしゃぎすぎ」
 「なんでさ!?」
 秋人が理不尽な扱いをうけているところで幸せを運ぶチャイムの音が鳴ったのだった。

 ほどなくして3人はテーブルを囲んでカレーを食べながら、これからの予定を決めていた。
 「今日は晩御飯も出前でいいけど、明日はちゃんとしないといけないわねぇ」
 「後でここらを散策がてら買出し行ってくるわ」
 「そう?じゃあお願いねぇ」
 末娘は二人の会話をききながらも、もぐもぐと美味しそうにカレーを食べていた。
 3人が仲良くカレーを平らげた後に、秋人は腹ごなしがてらに出かける事にした。
 今月は既に、だいぶ軽くなってしまった財布の中身を確認して、溜息をつきながらポケットにねじ込む。
 「バイトするか……」
 出掛けるついでに、求人誌も探してみようと考えながら靴を履き、いってきますと告げてドアを開ける。
 そして玄関から一歩外に踏み出した。

 新しい街、新しい家、きっと出会うであろう人達。
 そんなことをぼんやりと考えながら、秋人は歩き出した。

 そして始まる。ここから始まる物語。
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